市販薬を上手に使うために

日頃から自分の健康に関心をもち、軽度な体の不調は市販薬(OTC医薬品)などで手当てすることを「セルフメディケーション」といいます。市販薬の仕組みと家庭での備え方を知り、セルフメディケーションを上手に行えば、日々の健康管理に役立ちます

セルフメディケーションとは

「セルフメディケーション」は、「セルフ(自分で)」と「メディケーション(手当て)」を組み合わせた言葉です。世界保健機関(WHO)は、「自分自身の健康に責任をもち、軽度な身体の不調は自分で手当てすること」と定義しています。

ここでいう「手当て」は、薬を飲むことだけを指すのではありません。自分の体の状態に関心を持ち、生活習慣を改善して体調を整えておくことも含みます。健康管理を行ったうえで、軽い不調には市販薬などで対処し、必要なときには自分で判断して医療機関にかかる。この一連の行動がセルフメディケーションです。

セルフメディケーションの具体例
  • 健康診断を毎年受け、結果を確認して生活の見直しに生かす
  • 定期的にがん検診を受ける
  • 体重や血圧を家庭で測り、いつもとの違いに気づけるようにする
  • インフルエンザワクチンなどの予防接種を受ける
  • 食事、運動、睡眠、飲酒、喫煙といった生活習慣を整える
  • 気軽に相談できるかかりつけ医、かかりつけ薬局をもつ
  • 軽い不調は市販薬で手当てし、改善しないときは医療機関を受診する

受けた健診の結果を活用しよう

セルフメディケーションで重要なのは自分の体の状態を知ることです。しかし、病気には自覚症状のないままに進行してしまうものがあります。このため、健診を受けて血圧や血糖、脂質など体の状態を把握しておくことが大切です。その意味で、健診はセルフメディケーションの出発点に当たります。

健康保険組合は、健診を保健事業の柱として実施しています。皆さんの健康管理を支える仕組みですので、健診結果をよく確認して生活習慣を見直すために活用してください。健診結果は保管しておき、前年、前々年の数値と見比べると、基準値の範囲内であっても悪化している項目に気づくことがあります。

市販薬(OTC医薬品)の仕組み

薬局やドラッグストアで処方箋なしに買える市販薬を、OTC医薬品と呼びます。OTCは「Over The Counter」の略で、カウンター越しに薬を受け取ることに由来します。

医師の処方箋なしで購入できる薬は、下記のように副作用などのリスクの程度に応じて分類されています。リスクが高いものは、原則として薬剤師の説明を受けなければ購入ができません。陳列場所も分けられており、要指導医薬品や第1類医薬品は自由に手に取ることができない場所に陳列することが決められています。

OTC医薬品の分類
分類 リスクの程度 対応する専門家 説明義務 具体的例
特定要指導医薬品 薬剤師による対面での情報提供・指導が必要なもの 薬剤師 義務
(対面のみ)
緊急避妊薬
要指導医薬品 OTC医薬品になってからの期間が短く、リスクの程度が確定していない 薬剤師

義務

OTC医薬品として発売されて間もない薬など
第1類医薬品 リスクが高く特に注意が必要なもの 薬剤師 義務 胃腸薬(H2ブロッカーを含む)、解熱鎮痛薬(ロキソプロフェンを含む)、排卵日予測検査薬など
第2類医薬品 リスクが比較的高い 薬剤師または
登録販売者
努力義務 総合感冒薬、解熱鎮痛薬、水虫薬、睡眠改善薬、乗り物酔い薬など
第3類医薬品 リスクが比較的低い 薬剤師または
登録販売者
ビタミン剤、整腸薬、消化薬、消毒薬など

症状に応じてOTC医薬品を活用する

OTC医薬品が向いているのは、原因がはっきりしていて症状が軽く、数日で治まると見込まれる不調です。鼻水やのどの痛み、軽い頭痛、胃もたれ、筋肉痛、虫刺されなどに対して、症状を緩和するためにOTC医薬品を活用します。

一方、高熱が続く、強い痛みがある、息苦しさがある、持病があって症状がいつもと違う、といった場合は早めに医療機関を受診してください。妊娠中・授乳中の方や、複数の薬を常用している方は、自己判断は避けて安全のために医師や薬剤師に相談することが大切です。

目安として覚えておきたいのが、服用期間です。数日から1週間ほど使っても症状が改善しない場合は、漫然と服用を続けずに医療機関を受診しましょう。パッケージや添付文書に記載された服用期間の目安も、必ず確認しましょう。使用したOTC医薬品はお薬手帳に書き留めておき、医師や薬剤師にお薬手帳を見せて相談しましょう。

セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)

対象となるOTC医薬品を購入すると、確定申告を行うことで所得控除が受けられる制度です。この制度を「セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)」といいます。所得が減ることで、所得税と住民税の負担が軽くなります。利用するには健康診断の受診や予防接種など、健康の保持増進のための取り組みが必要です。

控除される額は、OTC医薬品の購入額で1年間(1月1日から12月31日まで)に12,000円を超えた額(上限88,000円)です。自分の分だけでなく、生計が同じ家族の購入分も合算できます。

対象商品には、パッケージに識別マークが付いており、領収書にも印が付きます。申告のときに1年分の購入額を集計しますので、領収書は捨てずに保管しておきましょう。

なお、この制度と通常の医療費控除は、どちらか一方しか利用できません。どちらの制度を利用したほうが控除額が大きくなるかを確認したうえで、確定申告を行ってください。

家庭用常備薬の準備と管理

急な体調不良や小さなけがに備え、家庭用常備薬としてOTC医薬品を用意しておきましょう。症状が軽いうちに家庭で適切な薬を服用することで、悪化を防ぎ早期回復につなげることができます。さらに災害に対する備えにもなります。

家庭用常備薬は家族構成や体質などを考慮し、使用頻度の高い症状に対応できるOTC医薬品を中心にそろえておくのがおすすめです。基本となるのは、解熱鎮痛薬、総合感冒薬、胃腸薬、整腸薬、外用の消炎鎮痛薬(湿布など)、かゆみ止め、消毒薬と絆創膏です。体温計も一緒に保管しておくとよいでしょう。家族に持病がある場合は、かかりつけ医や薬剤師に相談したうえで必要なものを加えてください。

家庭に備えておきたい基本の常備薬

外用薬

  • 絆創膏、ガーゼ
  • 消毒薬
  • 湿布薬
  • かゆみ止め(虫刺され外用薬)

など

内服薬

  • 解熱鎮痛薬
  • 総合感冒薬(かぜ薬)
  • 胃腸薬・整腸薬 

など

家庭用常備薬を管理する際のポイント
  • 使用期限は定期的にチェック
  • 直射日光や高温多湿を避けて保管
  • 家族の誰もが分かり、子供の手の届かない場所に保管
  • 薬の効能・用法を家族で共有
  • 持病がある場合は医師に相談してから選択
家庭用常備薬の管理方法

家庭用常備薬で大切なのは薬の使用期限を守ることです。薬には使用期限があり、開封後は表示より早く品質が落ちるものもあります。使用期限が切れているものは、薬の成分が変質している可能性があることから使用できません。年に1回、点検して期限切れを処分してください。

保管場所は、直射日光と高温多湿を避けられるところを選びます。窓際など温度変化が激しい場所や湿気の多いキッチン・浴室付近は適していません。保管場所は家族の誰もが分かる場所にして、いざというときに使えるようにしておきます。ただし、小さい子供が誤って使用してしまわないように、手の届かない場所にしましょう。

OTC類似薬に対する保険給付の見直し

令和9年3月から「OTC類似薬」に対して保険給付の範囲が見直され、特別料金がかかる仕組みが導入される予定です。

OTC類似薬とは、医師の処方箋が必要な医療用医薬品の中で、OTC医薬品と成分、飲み方、1日の最大用量が同じ医薬品のことです。対象となるOTC類似薬の薬剤費のうち4分の1が保険給付の対象外となり、「特別の料金」として全額自己負担になります。残りの4分の3にはこれまでと同様に健康保険が適用されます。

背景にあるのは、医療費の伸びと、それを支える現役世代の保険料負担です。OTC医薬品で対応できる薬にまで限られた健康保険の財源を使うのではなく、必要性の高い医療に保険給付の重点を置くべきだという考え方によるものです。

OTC類似薬の対象範囲

OTC類似薬となるのは77成分で、約1,000品目となる予定です。主な対応症状として挙げられているのは、鼻炎、胃痛・胸やけ、便秘、解熱・痛み止め、風邪症状全般、腰痛・肩こり、水虫、口内炎、皮膚のかゆみなどです。日常的な不調に使う薬が幅広く含まれます。例えば、湿布などの鎮痛消炎剤の外用薬は、長期間続けて使用していても原則として特別料金の対象です。

一方で、同じ成分の薬でもOTC医薬品では認められていない効能・効果を目的として使う場合は、追加の負担を求めないとされています。OTC類似薬としてその薬が特別料金の対象かどうかは、症状だけでなく使う目的によっても変わるということになります。

特別料金がかからない場合

必要な受診をためらう人が出ないように、次のような場合には、特別料金がかからないようにする方向で議論されています。なお、下記以外に子供と低所得者も特別料金がかからないように配慮される予定です。

特別料金の対象外の例(検討中)
  • がんの治療中に、がんやその治療に関連して生じた症状に使う場合
  • 指定難病の患者や、国の公費負担医療を受けている方が、その疾患に関連して使う場合
  • 入院中(退院時を含む)の使用
  • 検査、処置、手術などに伴う症状への対応で処方される14日分までの使用
  • 医師が長期の使用を医療上必要と判断した場合(内服薬は年間の処方日数がおおむね50週を目安)
  • OTC医薬品の添付文書で服用しないこととされている妊婦や授乳をしている人などが使う場合
※上記の内容は「OTC類似薬の保険給付の見直しの実施に向けた中間とりまとめ」(令和8年8月6日)によるものです。